東京高等裁判所 平成2年(行ケ)216号 判決 1991年5月30日
東京都港区南青山四丁目二三番一一号パールマンション
原告
株式会社フランボアゼ
右代表者代表取締役
久加天進
右訴訟代理人弁護士
鈴木修
同弁理士
森川正仁
東京都渋谷区神宮前四丁目二番一一号ベルエアビル
被告
ジャス・インターナショナル株式会社
右代表者代表取締役
高橋功
右訴訟代理人弁護士
飯田秀郷
右訴訟復代理人弁護士
栗宇一樹
同弁理士
飯田幸郷
同
黒田博道
同
松田雅章
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
「特許庁が昭和六〇年審判第一八〇四号事件について平成二年六月二八日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。
二 被告
主文と同旨の判決。
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
本件商標 登録第一二八四二一七号商標(構成は別紙のとおりである。)
商標権者 原告
登録出願 昭和四八年八月三日
商標登録 昭和五二年七月一五日
存続期間の更新登録 昭和六三年三月二五日
指定商品 第一七類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」
商標登録取消審判請求 昭和六〇年一月二五日(昭和六〇年審判第一八〇四号事件)
請求人 被告
商標登録取消審決 平成二年六月二八日
二 審決の理由の要点
1 本願商標の構成、指定商品、登録出願日、商標登録日及び更新登録日は前項記載のとおりである。
2 請求人(被告)の主張
請求人が種々調査した結果、本件商標は、商標権者により少なくとも過去三年以内に日本国内において指定商品について使用されていないことが判明した。したがって、本件商標は商標法五〇条により登録を取り消されるべきである。
請求人は、本件商標と類似する「FRAMBOISE」の商標を使用した各種布製身回品の製造販売を計画し、その商標権を確保するために昭和六〇年一月二五日に商標登録出願(昭和六〇年商標登録願第四九五九号)した。したがって、請求人は、本件商標の登録を取り消す必要があるので、本件審判請求に利害関係を有するものである。
3 被請求人(原告)の主張
(一) 請求人は、本件審判請求につき利害関係を有しないから、この審判請求は、不適法であってその補正をすることができないものである。よって、本件審判請求は、商標法五六条で準用する特許法一三五条の規定により、審決をもって却下されてしかるべきものである。
(二) 被請求人は、審判請求前より本件商標をその指定商品中「婦人用セーター」に使用しており、かかる事実は、乙第一号証の一及び二の写真、同第二号証の一「センイ・ジャーナル」及び二「繊維新聞」誌上の新聞広告、同第三号証のカタログ、同第四号証の一及び二に示す業務用封筒、便せん並びに通信用ハガキ(いずれも写)によって明らかである。
4 審決の判断
(一) まず、請求人が本件審判請求につき利害関係を有する根拠として提示した昭和六〇年商標登録願第四九五九号の商標について、当審で職権をもつて調査するに、該商標は、昭和六〇年一月二五日に登録出願され、同六一年四月二三日付で商標法四条一項一一号に該当するとして本件商標を引用した拒絶理由を受け、現在審理中のものであることを確認し得た。
してみれば、請求人は、本件審判の請求をするについて、利害関係を有するものと認められる。
(二) そこで、本案について、被請求人の提出した乙第一号証ないし同第四号証をみるに、乙第一号証(一及び二)は、撮影者、撮影年月日、撮影場所が不明である。乙第二号証の一は、本件審判請求の登録日(昭和六〇年五月一四日)以降のものである。乙第二号証の二は、「繊維新聞」であるところ、これに掲載された広告において、被請求人の指摘する「FRAMBOISB CO. LTD. 20ANSDIVISION」の文字部分は、被請求人の英文の商号を含むものであるとしても、本件商標とは構成を著しく異にするものである。乙第三号証は、請求人の主張する使用商品「婦人用セーター」について、具体的に何等記載されていないものであるから、被請求人会社のパンフレットであるものとしても、該使用に係る商品のカタログとは認められない。また、乙第四号証(一及び二)は、被請求人の代理人「石原栄次」宛に(本件審判請求の登録日以降)送達された郵便物に過ぎない。
してみれば、被請求人は、前記以外に本件商標の使用を立証すべきものを提出されていないものであるから、本件審判請求の登録日前三年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品について使用されていなかったものと認めざるをえない。
したがって、本件商標は、商標法五〇条一項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
(以上の書証番号は審判手続きにおけるものである。)
三 審決の取消事由
1 審決の理由の要点1ないし3及び同4(一)は認める。同4(二)は争う。
原告は、本件審判請求の登録の日(昭和六〇年六月三日)前三年間、本件商標を指定商品に使用していたにもかかわらず、審決は、使用していなかったと誤って認定したものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。
2(一) 原告は、昭和六〇年六月三日の前三年間、本件商標をその指定商品であるセーター、ティーシャツ、トレーナー、スーツ、ワンピースに使用していたものである。なお、本件商標は原告の商号商標であり、右期間のみならず設立当初から継続して使用してきたものである。
(二) 右使用の事実は、甲第四号証の一ないし三、第五号証の一ないし五、第六号証の一ないし三及び第七号証の一ないし三から明らかである。
すなわち、甲第四号証の一ないし三(国立国会図書館発行の「国立国会図書館所蔵図書館資料に関する証明書及び雑誌「ジェイ・ジェイ」(昭和五九年一〇月号))によれば、国立国会図書館昭和五九年九月二九日受入れの雑誌「ジェイ・ジェイ」(昭和五九年一〇月号)に本件指定商品であるニットセーターの原告商品の広告として商標「FRAMBOISE」が使用されている(同号証の三、二段目左)ことが明らかであり、甲第五号証の一ないし五(国立国会図書館発行の「国立国会図書館所蔵図書館資料に関する証明書及び雑誌「キャンキャン」(昭和六〇年六月号及び昭和六一年三月号))によれば、国立国会図書館昭和六〇年四月二〇日受入れの雑誌「キャンキャン」(昭和六〇年六月号)に「FRAMBOISE」と横書きした原告商品であるニットセーターが掲載され、本件指定商品に本件商標が使用されている(同号証の三、右側写真)。なお、これらに示された「FRAMBOISE」は、蝶の図形を欠き、また字体が多少異なるが、称呼、観念(えぞいちごの実を意味するフランス語)を共通にし、その外観も全て大文字のアルファベットを横書きにしてなる点で本件商標と同一であり、字体の多少の相違も本件商標と異なる商標とする程のものでもないから、本件商標と社会通念上の同一性の範囲内にあるものである。特に、蝶の図形の欠落の点は、本件商標は単に図形と文字が併記されたものであり、且つ図形も文字部分に比較して小さなものであるから、図形部分がないとしても社会通念上の同一性の範囲内というべきである。したがって、甲第四号証の一ないし三及び甲第五号証の一ないし五は、原告による本件商標の使用の事実を示すものというべきである。
甲第六号証の一ないし三(昭和六〇年九月二〇日発行のファッションブランド年鑑)の一六九頁には原告会社の昭和六〇年七月期(昭和五九年六月から昭和六〇年七月まで)の「FRAMBOISE」商標を付した商品(セーター、ティーシャツ、トレーナー、スーツ、ワンピース)の売上が年商一八億円である旨の記載がある、したがって、原告が本件審判請求の登録日である昭和六〇年六月三日前三年間に本件商標を本件指定商品に使用していたことは明らかである。なお、ここに示された「FRAMBOISE」とは、実際には蝶の図形を配した本件商標そのものであることは、甲第七号証の一ないし三(昭和五七年度用の原告会社案内及び写真)から推認し得るところであるが、この「FRAMBOISE」自体も、称呼、観念を共通にし、その外観も全て大文字のアルファベットを横書きにしてなる点で本件商標と同一であり、字体の多少の相違も本件商標と異なる商標とする程のものでもないから、本件商標と社会通念上の同一性の範囲内にあるものである。したがって、甲第六号証の一ないし三は単独で原告による本件商標の使用の事実を示すものというべきである。
甲第七号証の一ないし三(昭和五七年度用の原告会社案内及び写真。なお、甲第七号証の一が昭和五七年度用の会社案内であることは、初任給及び採用人員の従来実績として昭和五五、五六年入社を掲示していることから明らかである。)の表紙、三頁及び五頁には本件商標が示されており、また、五頁には商品としてニットウェアが示されている。更に、二頁の写真には本件商標が付されたセーター類が示されている。以上から、昭和五六、七年当時、原告が本件指定商品であるセーター類に本件商標を使用していたことは明らかである。
なお、甲第七号証の一ないし三は、原告による昭和六〇年六月三日前三年間の本件商標の使用を直接示すものとはいえなくとも、少なくとも原告か商号商標として本件商標を本件指定商品に使用してきた事実を示すものであり、したがって、右期間においても使用を継続していたことを充分推認させるものというべきである。
第三 請求の原因に対する認否及び被告の主張
一 請求の原因一及び二は認める。同三は争う。
審決の認定、判断は相当であり、審決には取り消すべき違法はない。
二 被告の主張
1 商標法五〇条二項の商標登録の取消の要件は、単に当該商標が使用されていることが認められないことではなく、審判手続において被請求人の当該商標の使用立証が成功しなかったことである。
特許庁における審判手続と審決取消請求訴訟とけ訴訟法上審級の継続はなく、商標法五〇条二項本文において規定されている証明責任は、審判手続における特殊なものとして解されなければならない。商標登録取消審判請求手続の審理の対象は当該商標の特定期間内の使用の有無であるのに対し、審決取消請求訴訟の審理の対象は当該審決の違法性の存否であって、審決取消請求訴訟手続内で当該商標の使用の有無自体が審理の対象となったり、別途、証明の対象となったりすることはないのである。
したがって、審判手続において被請求人の当該商標の使用立証が成功しなければ、その取消を免れず、後日、審決取消請求訴訟手続において別途の証拠を提出して当該商標の使用を立証することはできないものといわなければならない。
2 原告は、本件訴訟において提出した証拠をもってしても、本件審判請求の登録前三年間、本件商標を指定商品に使用していた事実を証明することはできない。
すなわち、甲第四号証の三には、「フランボアゼ」「FRAMBOISE」の記載部分があるが、カタカナ記載部分は本件商標と外観も著しく異なり、またローマ字部分についても、本件商標の要部である図柄もなく、またその字体も異なるから、本件商標との同一性がない、更には、これら記載部分は、商標使用とはいえず、商品との関連も不明である。
甲第五号証の二には、「FRAMBOISE」と大書したニットが記載されているが、商標的使用に当たらない。また、本件商標の要部である図柄も欠くものであって、本件商標との同一性はない。
甲第五号証の四ないし五は、昭和六一年一月二二日国会図書館受入れのものであり、本件審判請求の登録日である昭和六〇年六月三日以降のものであって、審判請求の登録前三年以内の商標の使用を証明する能力を有しない。更に、甲第五号証の五には、本件商標は全く記載されておらず、商標使用を証するものではない。
甲第六号証の一ないし三は、その発行年月日が昭和六〇年九月二〇日であって、本件審判請求の登録日である昭和六〇年六月三日以降のものであって、本件審判請求の登録前三年以内の商標の使用を証明する能力を有しない。更に、甲第六号証の一ないし三には本件商標は全く記載されておらず、これは商標使用を証明するものではない。
甲第七号証の一の発行年月日は不明である。原告が本件商標の使用が示されていると主張する表紙、三頁及び五頁記載のものは、本件商標と同一のものではない。また、これらは会社の概要を説明するためのものであって、商標的使用ではない。
第四 証拠関係
本件記録中の書証目録記載のとおり
理由
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、審決の理由の要点、本件商標の構成、指定商品及び登録出願日、設定登録日及び存続期間の更新登録日が、いずれも原告主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証によれば、本件商標登録取消審判請求の登録年月日は昭和六〇年六月三日であることが認められる。
二 新たな証拠の提出の可否について
被告は、商標登録取消審決に対する審決取消請求訴訟において、審判請求手続におけるとは別途の証拠を提出して当該商標の使用を立証することはできない旨主張する。
しかしながら、商標法五〇条一項は、継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが各指定商品について登録商標を使用していないことを右商標登録取消しのための実体的要件として定めたうえ、右取消を利害関係人からの審判請求に係らしめたものであり、同条二項は登録商標使用についての立証責任を被申請人(商標権者)に課したものである。このように特定期間における登録商標の不使用が商標登録取消しのための実体的要件である以上、不使用による商標登録取消しを求めた審判請求を認容した審決の取消訴訟において、新たな証拠に基づく当該商標使用の事実の立証を制限する理由はなく、この点が立証されれば、右審判請求を認容した審決は、商標登録取消しの実体的要件を欠くにもかかわらず、これが存在するとして判断したことに帰するのであるから、違法として取り消されることになるのである。したがって、この点に関する被告の主張は理由がない。
三 本件商標の使用の事実の存否
次のとおり、原告が本件訴訟において提出した各証拠によるも、本件審判請求の登録前三年以内に日本国内において本件商標を指定商品に使用していた事実は、認めることができない。
1 成立に争いのない甲第四号証の一(国立国会図書館発行の一国立国会図書館所蔵図書館資料に関する証明書)及び同証拠によって真正に成立したと認められる甲第四号証の二、三(雑誌「ジエイ・ジエイ」(昭和五九年一〇月号))によれば、国立国会図書館昭和五九年九月二九日受入れの雑誌「ジェイ・ジェイ」(昭和五九年一〇月号)一三頁に本件指定商品であるニットセーターについての原告商品が掲載され、同商品の下欄には原告の商号である「フランボワゼ」の記載に続いて商品内容の紹介が記載され、更に右紹介記事とは別に、同商品の右下に「FRAMBOISE」なる標章が附せられていることが認められる(同号証の三、二段目左)。また、成立に争いのない甲第五号証の一(国立国会図書館発行の「国立国会図書館所蔵図書館資料に関する証明書)及び同証拠によって真正に成立したと認められる甲第五号証の二、三(雑誌「キャンキャン」(昭和六〇年六月号))によれば、国立国会図書館昭和六〇年四月二〇日受入れの雑誌、キャンキャン」昭和六〇年六月号五〇頁には原告商品であるニットセーターが掲載され、同商品の胸の辺りに「FRAMBOISE」なる文字が標章として附されていることが認められる(同号証の三、右側写真)。
原告は、右「FRAMBOISE」なる標章を附したことをもって、本件商標の使用である旨主張する。
2 そこで判断するに、別紙のとおりの本件商標は、左端に図案化された蝶の図形を配し、若干の間隔をおき、右図形とほぼ高さを同じくして横一列に図案化された「FRAMBOISE」なる文字を配し、更に右文字部分の下段中央付近にこれと平行に小さく表示された「AOYAMA TOKYO」なる文字を配することにより構成されたもので、全体として一つのまとまりのある形態をなしていると認められる。そして、その外観に照らし、右図形と文字の配列のうち、下段の小さく表示された「AOYAMA TOKYO」の部分を除き、少なくとも、いずれも図案化され横一列に配された蝶の図形部分と「FRAMBOISE」なる文字部分が一つのまとまりあるものとして本件商標の構成上の特徴を形成しているものというべきであり、そのいずれかを欠落させた構成はもはや本件商標との同一性を有するものと認めることはできない。したがって、右の「FRAMBOISE」の文字のみからなる標章は、本件商標との同一性があるというこ、とはできない。
この点に関し、原告は、本件商標は単に図形と文字が併記されたものであり、且つ図形も文字部分に比較して小さなものであるから図形部分がないとしても社会通念上の同一性の範囲内であると主張する、しかしながら別紙の本件商標の構成により蝶の図形部分と「FRAMBOISE」の文字部分を対比すると、図形部分は一個であるのに文字部分は九個の文字からなり、両者は対照的な存在として認識され、図形部分の横幅(蝶の羽の横幅の最も広い部分)と文字部分全体の長さの比率は約一対四であることが認められるのであり、更に図形と文字という構成要素の異質性を勘案すれば、本件商標の同一性の判断に当たり図形部分の存在を無視することは許されず、前記のように図形部分と文字部分が一つにまとまった形態をなしているものと認めるのが相当であるから、原告の主張は採用しがたい。
なお、前掲甲第五号証の一によって真正に成立したと認められる甲第五号証の四ないし五(雑誌「キャンキャン」(昭和六一年三月号))は、昭和六一年一月二二日国会図書館受入れのものであり、且つ雑誌、キャンキヤン」昭和六一年三月号として発売されたものであるから、本件審判請求の登録日である昭和六〇年六月三日以降のものであって、審判請求の登録前三年以内の商標の使用を証明する資料とはならない。
3 弁論の全趣旨から真正に成立したものと認められる甲第六号証の一ないし三(昭和六〇年九月二〇日発行のファッションブランド年鑑)によれば、同ファッションブランド年鑑一六九頁には、「フラソボアゼ(FRAMBOISE)」なる標題のもとに、原告会社の昭和六〇年七月期(昭和五九年六月から昭和六〇年七月まで)の商品(セーター、ティーシャツ、トレーナー、スーツ、ワンピース)の売上が年商一八億円である旨の記載が認められる。しかしながら、同号証には本件商標は全く記載されておらず、本件商標使用を証明する資料とすることはできない(右標題の記載をもって本件商標の仕様ということができないことはいうまでもないところである。)。
4 弁論の全趣旨から真正に成立したものと認められる甲第七号証の一(昭和五七年度用の原告会社案内であることは、後記のとおりである。)の発行年月日は不明である。しかしながら、同号証の一によれば、同号証の一には初任給及び採用人員の従来実績として昭和五五、五六年入社が掲示されていることが認められ(二枚目表)、同号証の一が昭和五七年度用の原告会社案内であることは明らかである。
ところで、同号証の一の一ないし三枚目の各表には、本件商標とは配置が異なるが、本件商標と同様に図案化された「FRAMBOISE」なる文字と本件商標と類似の図案化された蝶の図形とからなる、本件商標と類似する標章が記載されていることが認められる。しかしながら、これらの記載は、いずれも指定商品に直接使用されたものとは認められず、したがって、これらの記載をもって、本件商標の使用を認めることはできない。
また、弁論の全趣旨により同号証の一の一枚目裏の拡大写真であると認められる同号証の二、三によれば、必ずしも鮮明とはいい難いが、同号証の一の一枚目裏の写真には本件商標らしき標章が附されたセーター類が示されていることが認められる。しかしながら、同号証の一が昭和五七年度用の原告会社案内であることは前記のとおりであるところからすると、同号証の一は少なくとも昭和五七年四月一日以前に発行されたものであると推測するのが相当であり、したがって、本件商標が付されたこれらセーター類が原告の商品を示す写真であるとしても、これらが商品も昭和五七年四月一日以前の商品であることになり、同号証をもって、本件審判請求の登録前三年以内である昭和五七年六月四日から昭和六〇年六月三日までの間に日本国内において本件商標を指定商品に使用していた事実を認めることはできない。
四 よって、原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条及び、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松野嘉貞 裁判官 舟橋定之 裁判官 杉本正樹)
別紙
本件商標
<省略>
(色彩を省略する)